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べっ甲



熱帯の海に生息するタイマイ

べっ甲はタイマイの甲らで、タイマイの生息地は、赤道を中心に一〇度以内の南海、インドネシア、西インド諸島、キューバ、コスタリカなどの近海に限られる。
タイマイの甲の大きさは六〇センチ程度。
大きいものは一メートルに及ぶ。背の甲は瓦屋根のように十三枚の甲が重なり合っており、それぞれの甲は二〇×一五センチ程の大きさで、重なり合っている部分は薄い。成分はケラチンで、加熱すると軟らかくなるため、それを利用して細工する。

黒甲、白甲、飴甲、ばら斑甲

べっ甲の色合いから、黒の部分を黒甲、亜麻色の透明度の高い部分を白甲、茶色や飴色のものを飴甲、亜麻色の中に黒、茶色の斑の入ったものをばら斑甲と呼ぶ。白甲は腹の甲
からとれ、髪の色にうつりがよいことから髪飾りに好まれ、欧米では特に人気がある。黒甲は蒔絵を施したり、螺鋼、真珠を埋めたりして用いられることが多い。日本ではばら斑甲が好まれている。

玳瑁が鼈甲と呼ばれたわけ

南海でとれたタイマイは、主としてイタリアと日本で宝飾品として加工され、特に日本では、徳川時代にきものとマッチした髪のものとして発達し完成したが、べっ甲細工は、既に奈良時代に日本に渡来していた。しかし、髪飾りとしてべっ甲細工が急速に発達したのはやはり徳川時代。当時の貿易港、長崎に入ったべっ甲は、江戸へ運ばれ、江戸の職人の手で櫛や簪、笄に仕上げられて大名や富裕な商人、遊女などの間に流行していった。そのため時の八代将軍吉宗が華美に流れるとして禁止したが、江戸庶民は「玳瑁は、往昔一旦制禁ありしを、その禁綱のゆるみを伺い、鼈甲と名をつけて互市を始め、ついにその玳瑁なることを知れども、知らぬふりにて公然たることに成りたりと聞く」と『草茅危言』にあるように、玳瑁を、食用として許されていた鼈といつわって逃れ、それ以後、鼈甲と呼ぶようになったもの。

キズや破損は修復できる

べっ甲の硬度は低く、キズがつきやすいが、磨き直すことができ、割れたものは接着できる。酸にも強いとはいえず、また虫がつくこともあるので、保存法としては使ったあとは、柔らかい布で拭き、薄紙に包んで、ナフタリンを少量そえておくことが肝要。




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 参考文献
 (株)講談社「宝石宝飾事典」
 柏書店松原(株)「宝石・貴金属大事典」
 中央宝石研究所パンフレット
 情報・宝石画像提供 ジュエルクライム