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真珠 パール


Pearl
名称 真珠 パール
硬度
結晶系
比重 2.70
白 ピンク 黄色 黒 グレー

月から落ちた涙

人類が真珠に出会ったのはかなり古く、貝塚などに見られるように、貝類を食べていた頃に偶然に見つけたと思われる。真珠について残されている最古の文献としては、中国の周代に著された『爾雅』(紀元前一〇〇〇年ごろ)がある。また書経の禹貢篇には禹王(紀元前二二○〇年)に真珠が献上されたと記されている。一方では、新約聖書にも真珠は貴重なものとして語られている。マタイ伝に「天国はよき真珠を求むる商人の如し。価高き真珠一つを見出さば行きて持てることごとくのものを売りてもこれを買うなり」の句や「豚に真珠を与うこと勿れ」の句がある。
何の変哲もない真珠貝からあのように美しい真珠がなぜ生れるかは長い間人類の不思議の一つだった。古代人は、月の落とした涙が貝の体内に宿り真珠が生まれた、雨の雫が貝体内で固まった、稲妻が貝の中に入り珠となった、また人魚の涙など、詩情美しく想像した。月光説は東洋にもあり、中国の明代の技術書ともいうべき『天工開物』には「凡そ珍珠〈真珠)は必ず(ドブ貝)の腹に産す。月を映じて胎を成す」と記されている。

動物学が養殖真珠への道を開いた

真珠はどうしてできるか、真珠の科学分析が進むと、真珠は偶然に真珠貝に入った貝殻、砂、寄生虫などが核となり、核を貝殻の内層を構成している真珠層がとり囲んでできることがわかると、人為的にこの核を挿入する研究が進められた。ドイツの動物学者へスリングらがドブ貝で試みたが成功しなかった。
明治二十一年、日本ではアコヤ貝の乱獲による絶滅を恐れた御木本幸吉が、アコヤ貝の養殖をはじめ、養殖場を見ているうちに真珠そのものの養殖を思いついた。動物学の第一人者であった、箕作佳吉の教えを受けて真珠養殖を試み、真珠の核に「さんご」や「万古焼」の種玉を使い実験を始めたのが明治二十三年。半円真珠を作り出すのに成功したのが二十六年、そして待望の真円真珠に成功したのは十二年後の明治三十八年、日露戦争のさなかであった。御木本幸吉が米国大統領ウイルソン夫人に会見した折、「真珠は月の涙・・・・・・」といった夫人に、すかさず「私の作る真珠は人間の涙の結晶です」と返したことは、養殖真珠に成功するまでの事情を物語るものだろ。
今日、日本の養殖真珠の輸出は約五一〇億円、国内販売一三○〇億円(昭和五十五年度)に達し、ダイヤモンドの一片も産出しない日本の唯一の輸出宝石であり、世界の真珠の九〇パーセントを産出するまでになっている。

天然真珠、養殖真珠、模造真珠

天然真珠も養殖真珠も、同じ真珠貝がその生理作用によって真珠層を形成するものであるから、本質上ほとんど変わらない。真珠形成作用の起こる原因が天然真珠の場合は偶然に貝体内に入った核から起こるのに反して、養殖真珠は人為的に貝体内に入れた核(ドブ貝を丸くけずったもの)から起こる点が異なるだけである。外観からは専門家でも区別し難い場合が多い。X線を透過して核の形を見るのが両者を区別する決め手となる。模造真珠は化学的に真珠層類似のものを作り出したものをいう。薄いガラスの小珠の内側に魚鱗箔など真珠色の物質を塗りつけ、中に白蝋などの物質をつめたものと、貝、ガラス、蝋石などを丸くけずって小珠を作り、その表面に真珠色の物質を層状に塗りつけたものとの二種ある。貝パールと呼ばれるものがこれである。

真珠の種類

養殖真珠は、その真珠を生む母貝の種類によってアコヤ真珠、白蝶真珠、黒蝶真珠、マべ真珠などに分類される。そのほか、イケチョウ貝を母貝とする真珠に淡水真珠がある。

アコヤ真珠=アコヤ貝は真珠層が美しく微妙な色合いを作り出す点で、真珠としてはいちばんすぐれている。しかし母貝の大きさ〈約一〇センチ〉から珠のサイズに制限があり、一〇ミリ以上の珠は少ない。大体五〜七ミリの珠で、八ミリ以上の真珠は大珠といって価格もぐっと高くなる。普通、養殖真珠というとアコヤ真珠をさすことが多い。

白蝶真珠=白蝶貝を母貝とする真珠で、南洋真珠ともいう(一般には黒蝶真珠も南洋真珠といっているが、厳密には白蝶真珠だけをいう)。南洋珠ともいい、白蝶貝は南洋諸島近海に生息する最大の真珠貝で、殻長は一五〜二〇センチ。真円真珠としては最も大きい珠径一〇〜一三ミリが採れる。オーストラリア、ビルマなどの近海で養殖されている。

黒蝶真珠=黒真珠ともいう。黒蝶貝から採れるシルバーから黒までの真珠。黒蝶貝の真珠層は外縁が帯緑の暗黒色で中央部が鋼鉄色を帯びている。灰色の真珠が多いが、ときにはごく上等とされている漆黒の珠がとれる。白蝶貝よりもやや小さいために採れる珠もやや小さめ。市販の黒真珠にはアコヤ真珠を黒く染色したものがかなりあるが、これは本当の黒真珠とはいえない。現在タヒチ島及び沖縄近海で養殖している。

マべ真珠=マべ貝を母貝として採れる半円形の真珠。マべ貝は比較的大きな貝で、殻に穴をあけ、そこから樹脂を注入して半球状のかたまりを殻の内側に作る。それを真珠層がとり囲んで半球状の真珠ができあがる。半円真珠のほとんどがマべ真珠である。

淡水真珠=琵琶湖や中国の湖水で産する淡水産真珠。母貝はイケチョウ貝で、アコヤ貝よりは大きく、殻長二〇〜三〇センチにまで成長する。二枚貝の外套膜を五〜七ミリに切除してこれをイケチョウ貝に挿入する。海水真珠は外套膜と核を挿入するが、淡水真珠の場合、八ミリ以下の珠であれば、この外套膜を入れるだけですむ。核がないため、珠は真円にはならず、フラットな米粒状やスティック状のもの、クロスなど様々な形のものが出来る。また母貝一個で四〇〜五〇個の小さな真珠を作ることもできる。現在は琵琶湖のほか茨城県霞ケ浦、岐阜県海津でも養殖している。
このほかアワビ貝からは朱色や紫の強烈な光沢を持つ珠が採れる。

真珠は形や色が多種多彩

真珠は貝の種類や育った環境などによって様々な形、色が産まれる。形は大きく分けて、真円真珠、半円真珠、変形真珠(バロック)がある。真円真珠は正円に近い「八方ころがし」といわれるものが上等。半円真珠はマべ貝に半球体が固着してできた半円形の真珠で明治二十六年、御木本幸吉が最初に作り出した養殖真珠は、前述のようにアコヤ貝による半円真珠であった。半円真珠は現在はアコヤ貝では作られていない。変形真珠は一般にバロックといわれている不定形のもので、ルネッサンス期、ドロップ形や様々な不定形の真珠が大流行したことがある。この時代に作られたトライトンの像や竜の胴体に模したバロック真珠のぺンダントは、最高に洗練されたものと評価されている。淡水真珠にはこの変形が多く、ダブレツト、クロス、ドラゴンなどの形がある。
真珠の色は虹の色にたとえられるぐらい多彩でピンク、ホワイト、クリーム、イエロー、ゴールド、シルバー、グリーン、ブルー、ブラックなどがある。一般にピンク系統が珍重され、黄色系は多量に産することから割安になっている。淡水真珠ではこのほかに、オレンジ色の濃淡、淡青色から深紫色を含むライラック色、ワイン色系まであり、調色加工されることもある。

真珠の選ぴ方のポイン

真珠の評価は真珠の光沢、形、大きさ、キズの有無がポイントになる。
①真珠の核を巻いている真珠層に厚みがあり光沢に深みのあるものがよい。この厚みのことを「巻き」といい、巻きが厚いのがよい。
②形が「八方ころがし」といわれる正円に近いものほど上等。
③サイズは大きい方がよい。真珠の大きさは直径で表す。一般に中珠といわれるのは六〜七ミリ、大珠は八ミリ以上をさし、直径が大きいほど高くなる。
④キズ、しみが無いもの。
以上は真珠の珠自体の評価ポイントであるが、ネックレスなど連になっている場合は、珠が互いによく調和しているかどうかも大切で、これを「連相」といい、特に真珠のネックレスは連相のよいものが高く評価される。

オリエントといわれる真珠光沢の秘密

真珠は核とそれをとり巻く真珠層から構成されているが、核は養殖真珠の場合は、ミシシッピ河でとれるドブ貝の貝殻を丸く削ったものが使われる。この核を挿入すると真珠貝は刺激物を排除しようとして外套膜(真珠層)がこれをとり込み、ついには貝体内に分離する。殻を作っている物質のアラゴナイト(炭酸カルシウム結晶)と分泌物の蛋白質であるコンキオリンが層状をなして核に沈着し、ついには美しい真珠を作る。この層は貝殻の真珠層と同じで、断面を顕微鏡で見るとアラゴナイトがれんが状に規則正しく積み重なり、その隙間をコンキオリンが埋めて接着剤の役割を果たしているのがわかる。これを真珠の表面から見ると、六角状のアラゴナイトがうず巻状の条線模様を描いている。オリエントといわれる独特の真珠光沢は、この真珠層が作り出している。真珠層の厚みは〇・三〜〇・五ミクロン(一ミクロンは千分の一ミリ)あり、核を挿入してから三〜四年の年月を必要とする。

真珠は優しい扱いを

真珠は宝石としては軟らかく、キズがつきやすい。また熱にも弱く、といっても真珠の指輪.をして火にあたる程度で変質することはないが、炎の中に落とせばやけただれてしまう。そして酸にも弱い。したがって肌に直接つけた場合は柔らかい布で拭いておき、汚れのあるときは石けん水で洗う。保管や持ち歩くときは柔らかい布で包み、キズをつけない注意がほしい。真珠のネックレスは、珠に通してある絹糸を年に一度ぐらい取り替えるとよい。

十宇軍が持ち帰った真珠

クレオパトラが真珠を酢に溶かして飲んだエピソードは有名だが、古代から中世にかけて、真珠は中東から運ばれた。十一世紀に始まった十字軍の東方遠征は、ペルシア湾、紅海、アドリア海で採れた真珠を大量にヨーロッパへ運ぶきっかけを作った。真珠の生成過程の神秘さが、宗教的に、儀式用に使われたが、大量に手に入ると、フィレンツェでは真珠を連ねたカーテンが現れ、豪華な衣裳には数千の真珠が縫いつけられた記録もある。
 
 参考文献
(株)講談社「宝石宝飾事典」
 柏書店松原(株)「宝石・貴金属大事典」
 中央宝石研究所パンフレット
 情報・宝石画像提供 ジュエルクライム

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