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エメラルド


Emerald
名称 エメラルド 翠玉
硬度 7.5〜8
結晶系 六方結晶
比重 2.70

エメラルドが属すベリル

べリルは、海緑色石を意味する。日本名は緑柱石。べリルは含有する微量な成分によって様々な色を持っている。緑色はエメラルド、海水青色はアクアマリン、黄色、帯緑黄色はへリオドール、無色はゴッシェナイト、ピンクはモルガナイトと呼ばれており、これらはすべてべリルの同族である。
べリルはべリリウムとアルミニウムを含む珪酸塩鉱物で、化学的に純粋な状態では無色である。このべリルそのものは日本でも産出し、それほど珍しいものではなく、工業用のべリリウムの原料となる。べリルに前記の色を与えているのは、ほんの微量のクロムや鉄分、マンガンなどである。六方晶系に属し、六方柱の結晶として産出する。

エメラルドの美しい緑色の決め手

エメラルドのあの鮮やかな美しい緑色は、微量に含まれている酸化クロムに起因している。この酸化クロムは、ルビーの鮮やかな赤色の決め手でもあって、同じアルミニウムとクロムの置換によってどちらも発色するが、この色の違いは酸化の原子価の相違によるものといわれている。またエメラルドには微量の鉄分も含まれており、これもエメラルドの色に微妙に影響していると考えられている。
エメラルドの緑色は、石取りの方向にも大きく影響される。エメラルドは二つの屈折率を持ち〈複屈折性)、二色性をはっきり示すため、結晶の軸方向によって色が異なって見える。
日本では青味を帯びた鮮やかな緑色が最も高く評価されるため、柱面をテーブルにしてカットすることが多く、この方が六方柱状の原石からカットするには歩留りもよい。
エメラルドが主としてエメラルドカットにされるのも、この二色性のためで、より美しいビロード質の緑色を見せる。同じ六方晶系に結晶する石でありながら、ルビーやサファイアがミックスカットにされることが多いのは、光軸に直角にテーブル面をとったこのカットの方が、好ましい色を示すからだ。
エメラルドでもあまり色の鮮やかではない石はカボッションにカットされることが多い。
また酸化クロムによる鮮やかな緑色だけをエメラルドといい、緑色を示しても酸化クロムを含有してない場合は、単にグリーンべリルという。

エメラルドのキズは天然の証明

「キズのないエメラルドを得ることは、欠点のない人間を探すよりむずかしい」といわれるほど、エメラルドには、普通「石れい」と呼んでいる内部的なひび、キズを含めた内包物が多い。このひびやキズは結晶時に内包されたもので、宝石価値を左右するいわゆるキズとは違うが、中には肉眼で容易に見える大きさのものも多い。エメラルドの場合のこのキズは、よほど目ざわりでないものであれば、むしろ天然石の証明とみてよく、それよりも色を重視した方がよい。この内包物は実に様様で、産出地によって特徴があるため、比重、屈折率などの条件と共に鑑別・識別などの貴重な要素となっている。

割れやすいが比較的硬い石

エメラルドはべリルと同じ、べリリウムとアルミニウムを含む珪酸塩鉱物で、これ自体は比較的地表近くにあり、産出量も多いが、エメラルドの緑色の決め手となる酸化クロムはかなり深い地層にあるため、エメラルドの産出量は限られ、産出地もごく一部となる。
硬度は七・五〜八。ルビー、サファイアには及ばないが、比較的硬い宝石である。しかし劈開性があり、しかも内包されているひびやキズが多いために、方向によってはちょっとぶつけただけでも割れることがある。硬度はあるが強度がない宝石なのである。したがって取り扱い、保管に注意が必要で、保管する際は柔らかい布などでエメラルドの部分をよく包んでおくことが大切だ。
エメラルドは同じ緑色でも透明度がよく、ビロード質や照りを感じさせるものの方が、高く評価される。

コロンビア産が質、量とも第一位

古代エジプトのクレオパトラ鉱山をはじめとして、エメラルドの発掘は、国王によって、侵略者、探険家たちによって、様々な形でくり返されてきた。
多量のエメラルドを産出したクレオパトラ鉱山は既に採りつくされてしまったが、スぺインの探険家ピサロによってョーロッパへ持ち帰られた厖大なエメラルドを産出したコロンビアの鉱山は、その後新しい鉱山も発見されて、現在も世界のエメラルドの八〇パーセントを占める量を産出している。コロンビアのアンデス山中にある首都ボコタの北方一帯がエメラルド鉱山群で、その一つ、歴史的にも有名なチボール鉱山は、スべインの征服を受けるかなり前から、「緑色の石の神」と呼ばれ、原住民のインディオたちの手によってエメラルドが採掘されていた。世界で最も美しい色のエメラルドを産出するのは同地方のムゾ鉱山で産出量も世界一を誇る。現在コロンビアのエメラルド鉱山の殆どは国営で厳重な政府管理のもとに置かれ、生産調整も行われている。一九七〇年、大阪で開かれた万国博覧会のコロンビア館に飾られたエメラルド原石は、高さ数十メートルとさえ思えるほどの六方晶系の見事なもので、まさに世界一の貫録であった。エメラルドの原石にはこのような六方晶系のきわめて美しいものが見られる。現在、日本ではこのコロンビア産のものがもっとも多く輸入されており、質も良好である。
ブラジルでは、中世からすばらしいエメラルド鉱床があるといういい伝えによって一五五四年以来、百年余にわたって数回の探険が行われている。いずれも発掘までにいたっていないが、一九六四年に大規模な良質のエメラルド鉱山が発見されている。
ソ連では一八三〇年、農夫によって偶然発見されたのがウラル山中のエメラルド鉱山である。
オーストラリアでは、一八九〇年にニューサウスウェトルズ州で、最初のエメラルド鉱山が発見され、一九〇九年には、ウエストオーストラリア州でも発見されている。
今世紀に入り南アフリカのトランスバール、ロ.ーデシア南部、インド、西パキスタン、タンザニア、ザンビアで順次、新しいエメラルド鉱山が発掘されている。
その他、アメリカのノースカロライナ州、コネチカット州などでも産出する。

クレオパトラが愛用したエメラルド

エメラルドという名称ば、ぺルシア語に由来し、ギリシア語から変化を経て現在のエメラルドの形になったのは十六世紀に入ってかららしい。当時は単に緑色の鉱物を意味していたといわれる。
宝石の中でもエメラルドの歴史は古く、伝説や信仰などに満ちている。また発掘の記録も厖大な量にのぽり、エメラルドへの関心が並々ならぬものであったことを示している。
エメラルドがいかに古くからの宝石であるかは、エジプトの女王クレオパトラが愛用したエメラルドのイヤリングが、女王所有のクレオパトラ鉱山のものであったという事実からもうかがい知ることができる。もっとも紀元前四〇〇〇年のバビロンの宝石市場では、すでにエメラルドの取引が行われていたとも伝えられている。このクレオパトラ鉱山は、紀元前二〇〇〇年頃に採掘がはじめられていた有名なエメラルド鉱山群で、かなりの量を産出していたらしい。ギリシア、ローマの遺跡から発見されるエメラルドはこの鉱山からのものと考えられている。この鉱山は紅海から一五マイル入り込んだ山中にあり、数百の竪坑の跡が見つかっている。その中には二五〇メートルにも及ぶ竪坑があるという。女王が愛用したエメラルドのために、多くの奴隷たちが酷使されたことが想像される。アレキサンダー大王も、この地でギリシア坑夫を使ってエメラルドの採掘をしている。
またローマの皇帝ネロは、眼鏡を使用した最初の人と記録されているが、眼鏡にエメラルドの薄片を使ったという。エメラルドを通して、あのコロシアムで行われた人と獣との闘技を見たのである。

目に安らぎを与える宝石

古代ローマ人は、エメラルドを神の石と考え、エメラルドを偶像の目に用いた。そして人々は目が疲れるとエメラルドをじっと見つめて、その疲れをいやしたという。
中世では胃腸病、らい病をはじめ、あらゆる魔除けとしても用い、十七世紀には安産の護符としていたことから、眼病に効き、妊婦に当てると出産を早めたり遅らせたりする力があるといい伝えられている。エメラルドほど健康の護守として尊ばれた宝石も珍しい。
エメラルドは五月の誕生石となっているが、紀元前一世紀の史書の中ではエレサレムの都の城壁を支える十二基の土台石と、イスラエルの司祭長の胸当てを飾る十二の宝石とは深い関係があり、しかもそれらはいわゆる黄道十二宮に関連づけられており、エメラルドは「かに座」に当てはめられている。黄道十二宮と宝石との繋がりが、現在の「誕生石」に発展したものらしい。誕生石は国により宝石が異なるが、四月のダイヤモンドと五月のエメラルドはどこの国においても不動である。

エメラルドのグリーンサラダ

スペイン王カルロス二世が狩りに出ての帰り、王妃のもとに獲物を届け「後ほど風味のよいサラダを届けよう」とことづけ、翌日、王妃に届けられたサラダは、金の皿に盛り込まれた、目もくらむような工芸品で、よく見ると緑の葉はエメラルド、酢はルビー、油はトパーズ、塩は小粒の真珠であった、というエピソードが伝えられている。集められたエメラルドの量は、いまでは想像もつかないほどのものに違いない。この話は一六八〇年五月のフランスの新聞で伝えられたという。
この時代には、ヨーロッパの国々の宮廷には、ふんだんに宝石が収蔵されていて、王侯貴族たちは、ことあるごとに宝石で身を飾った。ダイヤモンドはイギリス、フランスの宮廷に及ばずとも、南米をいち早く占領したスぺインは、コロンビア産の多くのエメラルドを持ち帰り、当時、各国の王宮を羨ましがらせたものだ。このエピソードもスぺイン全盛期の華やかな一ぺージといえる。
 
 参考文献
(株)講談社「宝石宝飾事典」
 柏書店松原(株)「宝石・貴金属大事典」
 中央宝石研究所パンフレット
 情報・宝石画像提供 ジュエルクライム

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