> こはく(琥珀)  ジュエリー宝石百科事典

こはく(琥珀)


Amber
名称 こはく(琥珀)
硬度 2〜2.5
結晶系
比重 1.08
黄褐色

数千万年の秘密をのぞかせるこはく

新世代第三紀、およそ三千万〜五千万年前にヨーロッパ大陸の豊かな森林地帯に繁茂した、こはく杉から滲み出した樹脂が、土中で硬化してできたのがこはくである。成分はこはく酸などの樹脂酸である。
こはくは透明から半透明で、色は乳白色、淡い黄色、黄褐色、蜂蜜色などがあるが、珍しいものとして、蛍光性をもったブルー、赤、紫、黒などのこはくがある。
こはくの特徴として一つに内包物があげられる。「こはくの中のハエ」は広く知られるところだが、そのほか蜂、蝶、蟻、蜘妹などがとりこまれているこはくが見つかっており、苔や各種の植物が含まれていることもあるが、いずれも稀。内包物は有機物ばかりでなく無機物の場合もある。一般によく見られるのは、樹脂が硬化する際、とり込んでいたガスが圧縮され、ついには破裂して、そのときにできた結晶風の美しい模様である。拡大してみると、こはくが閉じ込めてしまった数千万年前の世界をのぞくことができる珍しい宝石である。

ほとんどはバルト海域で作られたこはく

かつてバルト海域は椋欄や、楠、月桂樹、樫、礫などとこはく松の繁る森林地帯であった。バルト海と北海を境にした国々でこはくが採れるのはそのためである。現在の主要産出地はソ連のバルト海沿岸地区である。
こはくは比重が軽いため、シーアンバーは、潮流にのってはるかノルウェー、デンマーク、イギリス東海岸まで運ばれている。これらのこはくには黄色系が多い。
蛍光性をもった珍しいこはくはシシリー、ビルマ、ルーマニアで採れたが、現在はほとんど産出していない。ブルー・シシリアンと呼ばれる目のさめるようなブルー、蛍光性の強いビルマ産の赤、金色の斑点をもつ化石化したルーマニアの黒などのこはくは、コレクターの注目を集めている。

こはく文化

紀元前七世紀頃、すでにバルト海沿岸に住む原住民と地中海沿岸に栄えたエトルリア人との間にこはく貿易が行われていた。こはくと武器、工芸品との物々交換で、こはくは三つのルートで地中海に運ばれた。川沿いに、ヨーロッパを横断して黒海へ向うルート、山脈を越えるルート、そしてフェニキア人による海のルートで、これらをシルクロードに対してこはくロードといっている。こはくロードを通じて運ばれてきたこはくは豊かで、古代ローマでは、白やワックス色のものは香として薫くのに使い、赤みの入った透明なこはくや、ゴールデンイエローのこはくは、高度な技術でビーズネックレス、ボタン、ペンダントなどに作られた。
中世からルネッサンスになるとこはくは主としてロザリオに使われた。これは産出国であるプロイセンがチュートンに征服され、こはく統制を余儀なく行った結果、ロザリオにしか供給できなかったという事情によるものらしい。このロザリオも宗教改革によって需要が減少すると、種々のこはく利用法が考え出され、白いこはくは薬として使われたりした一方で、こはく彫刻、芸術品などに向けられた。
バロック期には、こはく彫刻家も登場し、様様な色のこはくが象眼、モザイクの手法で、装身具や調度品、教会の祭壇や壁などに用いられた。最もスケールの大きい芸術品はプロイセン王がべルリン王宮に作らせた「こはくの部屋」だろう。バロック様式の「こはくの部屋」はロシア皇帝に贈られることになり、プーシキンの「夏の宮殿」に移されたが、第二次世界大戦中、ドイツ軍に没収されたあと、その行方はわかっていない。「こはくの部屋」の壁は一面に様々な色調のこはくのモザイクが敷きつめられ、こはくの彫刻が飾られ、数百のこはくを飾り珠にしたシャンデリアが輝き、窓、扉は濃いゴールドのこはくで縁どられていたという。「こはくの壁は大理石と異なった暖かみのある美しさをみせ、全体の装飾もけばけばしくなく、よく調和がとれて快かった」と記録されている。十九世紀に入ると、もはや芸術面での新しい試みはなくなり、ブローチ、ブレスレット、ネックレス、たばこ入れ、パイプの吸い口、ぺーパーナイフの柄など、むしろ商工業的に作られた、石の価値のみを重視した時代になった。しかしアールヌーボーの運動が起こると再びこはく細工が流行をみた。

こはくの手入れ、保警

こはく細工はこわれやすいだけに、角をかいたり割ったりすることがあるので、置物の場合はガラスケースに入れて飾るのが賢明。ガラスケースに入れても、ときどき柔らかい布でほこりを払う。
装身具は、特に香水、へアスプレーなどがつかぬように注意すること、永久に光沢を失ってしまうことがある。湿気のあるときは柔らかい布で拭き、かなり汚れのひどいときだけにぬるめの石けん水で洗ってもさしつかえないが、乾燥後はオリーブ油を少量ぬって光沢をもとに戻しておく。
キズなどがつきやすいので、柔らかい布などで包んで保管する。


 参考文献
(株)講談社「宝石宝飾事典」
 柏書店松原(株)「宝石・貴金属大事典」
 中央宝石研究所パンフレット
 情報・宝石画像提供 ジュエルクライム

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